私は今晩、四国に行く。香川県立観音寺第一高等学校に招かれて、明日、「言葉って、どこが面白いの?」というテーマで講義する。私から一方的に話すのは面白くないので、高校生たちとディスカッションしようと思っている。議題は、次のように予定している。
7月末、約4年ぶりに米国へちょっと帰省しようと思っている。4年ぶりの日本国外への旅行にもなる。私のまわりには、一年に何回も外国に行く人が多いので、私の旅行嫌いがエキセントリックに見られるようだ。でも、旅行そのものはそれほど嫌いではない。大嫌いなのは長時間の飛行機搭乗だ。長身の私にとっては、近年ますます間隔が狭くなってきたシートに座りつづけることは拷問に等しいのだ。
それでも、船などでカリフォルニアへ行きたいわけでもない。昔、海洋の航行に少し憧れがあったが、約10年前に、Richard Henry Data, Jr. の旅行記 Two Years Before the Mast (『水夫としての二年間』)でホーン岬回りなどの恐ろしい記述を読んだら、死んでも船で海を渡りたくない気持ちになった。快適な海外旅行しかしたくない。
この間、 Internet Archive で不思議な出版物に出会った。派手な表紙に Chas. W. Poole's New Myriorama and Trips Abroad Illustrated Vocally, Musically & Pictorially と書いているが、 Myriorama という言葉は初耳だったし、最初はどういうものかわからなかった。それで、ページを捲って様々なフォントで綴った文を読んだら、19世紀の終わりごろ、イギリスで興業された見世物のガイドブックだとわかった。ロンドンから出発して、ナイアガラの滝や建設中のパナマ運河を経て、アフリカの奴隷売買やアルプスの雪崩を見てからロンドンに戻るという、絵と歌と解説による「旅」だったようだ。当時の新聞は、次のように書いていた。
The wonderful popularity of Poole's Myriorama has been vividly demonstrated by overflowing audiences, who have been warm in their approbation of the beautiful pictures exhibited to their delighted gaze. The variety entertainment is liberally supplied. Altogether Poole's Myriorama is an artistic, beautiful, and varied entertainment, which combines amusement with instruction, and which, while it delights the eye, improves the artistic faculty, informs the mind, and in some sort places the untravelled on a level with the travelled citizen. It can hardly fail to thoroughly satisfy and please all who visit it.
現在、少しは快適になった海外旅行などしなくても、映画、テレビ、インターネット等で全世界が手のひらに入ったようではあるが、1889年に戻ってロンドン子たちと一緒に Poole's Myriorama を見る方法はない。
今年の黄金週間は、素晴らしい天気だった。カメラを持って、英語と日本語の基本語彙を探しに東京各地を歩いた。次のような収穫があった。(ここにもある。)
この間にも書いたが、Oxford English Dictionary によると kamikaze という言葉の英語での初使用例は1945年だそうだ。OED(オンライン版)の例文は次のとおり。
1945 Newsweek 27 Aug. 25 As a British task force was hoisting victory pennants a Kamikaze darted out of the clouds toward the ship.
しかし、1944年12月1日の『英語青年』には、次の Nippon Times 記事が引用されている。
KAMIKAZE UNITS HIT 5 ENEMY WARSHIPS
IN LEYTE GULF AREA
IMPERIAL HEADQUARTERS' COMMUNIQUE, 4 p.m., November 3:—"1. The Special Kamikaze Air Attack Units on November 1 attacked the enemy convoy escort forces that are now penetrating the Gulf of Leyte and sank one cruiser and damaged one battleship, one battleship or cruiser, one cruiser, and one destroyer."
先日、この用例をOEDの編集部に送っておいた。
先日の投稿について、読者から貴重な指摘をいただいた。
自分は中国語を研究しているのですが、その記事で出てきた「ニガ」が気になったのです。
中国語では、「2」を意味する数詞が2つあります。「二」(er)と「両」(liang)です。そして、日本語の「2つ」の訳として、「二个」(er ge)を使うことはなく、「両个」(liang ge、リャンガ)を使います。また、方言でない限り、「二」という漢字を“ni”と発音することはありません。(逆に言うと、中国語の標準語でなく、方言の可能性はあります。)
ですので、「ニガ」という言い方は、日本語の「に」(2)と中国語の「个」(ガ)が合わさったportmanteauなのかもしれないと思いました。ガリーさんの比喩を使うと、local infectionなのだと思います。